先日、熊本市のバス、市電で全国交通系ICカードから離脱する、という話がありました。
今回のメルマガではこうした事例を見るとともに、
事業者がシステム導入や利用にもつながる部分がありますので
そちらについても考えてみたいと思います。
何が起きたのか?
全国交通系ICを使うには、当然、機器やシステムが必要となります。
そして、当然、永遠に使い続けられるわけはなく、更新が必要になります。
この更新コストが12億円以上かかるそうで、経営的に負担が厳しい。
そのため、更新をやめるという決断をしたようです。
新規導入時は国の補助が出るものの、更新時は出ないことも厳しい点のようです。
当たり前のことはできていたか?
個人的には、この事業的決断は正しいかと思います。
事業が成り立たないようなサービスを使うというのはありえないためです。
しかし、はっきりいって、導入の決断が甘すぎると感じます。
内部的な事情は分かりませんので、あくまで仮定でのお話ですが、
導入時にこうなるのは分かりきっているのでは、という点です。
システムを使うには、当然
新規導入コスト + ランニングコスト + 定期的な更新コスト
が必要になります。
補助金が出る対象がどのコストに対してかは分かっているでしょうし、
交通事業としての売上が急増することはまずないことも分かっているでしょう。
更新コストがどの程度かかるのかも、ある程度最初から把握できるはずです。
これらに想定外の事象があればまだ分かりますが、
そうでないとしたら、見通しが甘かっただけ、としか見えません。
今回はQRコードなどの別の手段に切り換えることで利便性の低下をできるだけ避ける、
とのことですが、こうした切替にも大きなコストがかかります。
こうしたコストは、回り回って、利用者や(また補助金が使われるのであれば)納税者の負担になります。
システム導入・利用も同じこと
こうした事象は、システム導入・利用においても同じです。
事業者には「IT導入補助金」といった制度がありますが、
そうした補助金の利用はさておき、
本当に必要で、持続利用可能なものかを検討いただきたいですね。
最悪なのは、「補助金があるからとりあえず導入する」ケースです。
導入コストが高いけど補助金があるから実質負担は少なくて済む。
それはそうなのですが、
導入コストが高い = 基本的にはランニングコストも高い
ということです。
さらに厄介なのは、事業にシステムを使っていくと、
データがそのシステムに蓄積されていくという点です。
システム利用を止める、別システムに切り換える、といった場合に
これらのデータを捨ててよいのであればまだよいですが、
通常、データは企業の大切な資産です。
こうした導入の判断を誤ることで、蓄積してきた資産を捨てるということになります。
事業でシステムを使うということは、事業にとって意味がないとただの負債です。
見た目だけの導入コストに騙されず、納得のいく判断をしていくことが非常に大切です。
無駄なものを導入すると、
費用が増える = 利益が減る = あなたの給料・賞与の原資がなくなる
ということであり、
まったくもって他人ごとではないはずです。
もちろん、本当に必要であり、持続可能であり、
補助金が出るタイミングで導入に踏み切る、というのは大いにアリだと思います。
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